正統的な農業の重要性
卸売市場での農産物価格というものは、全国の中央卸売市場などにおける供給量と需要量のバランスで決定されることになります。そして、その年の作物の収穫量や季節などによってこのバランスが変化しますから、供給量が多い時期には価格は下がり、少ない時期、いわゆる端境期には価格は高騰することになります。
生産者側とすれば、より高い価格で販売されることを望みますから、多くの産地ではこの端境期に出荷することを見込んで、計画的な農業経営を行っているわけです。
しかし、こうした戦略はそれほど成果を上げているというものでもないようです。例えば、夏から秋を旬とする温州みかんの場合、通常は適度な傾斜地において雨ざらしの状態で生産されています。しかしいくつかの産地では、端境期の春に出荷することを目論み、ハウスでの温室栽培を行っているところもあります。
確かにこの場合には、出荷単価は上がるわけなのですが、ハウスを維持するための燃料などの経費も嵩むために、利益率としてはそれほど変わらないというのが現状のようです。
また、旬のものとそうでないものとでは、その味にも差が出てくるわけであり、消費者側にしてみても味がやや落ちる旬のものでない作物を購入する行動にはなかなか出ないという問題もあります。
したがって、端境期を狙うよりも、その作物の旬というものを尊重した、ごく正統的な農業生産を行なった方が良いと思われます。そして、その自信のある味を消費者や小売店との契約販売によって供給していくことがさらに重要となるのです。